<<チェリビダッケとフルトヴェングラー 戦後のベルリン・フィルをめぐる2人の葛藤>>という本を読んだ。
2人の間で取り交わされた書簡を基本資料として書かれているのだが、チェリビダッケからのものは実質ないものに等しいため、いわばフルトヴェングラーの光からチェリビダッケの姿が影のように映し出されている、と言える。この本についてはあらためて触れることとして、チェリビダッケの音楽について、だ。
謎といえる。
チェリビダッケという指揮者は。僕にとってよくわからず、聴いていて納得したと思えるものがとても少ない。ボックスセットが3つ、その他1枚もののアルバムをそれなりを聴いてのこと。
たまたまNAXOSでオペラを振ったものを見つけ、どんなものかと聴いてみた。
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」(ハイライト)(ウィーン祝祭合唱団&管弦楽団/チェリビダッケ)
この作品は大好きなのだ。
少し古めのステレオ録音、それもテープから起こしたようで、転写がある。
演奏しているのは以下:
ウィーン祝祭合唱団のソリストたち – Vienna Festival Chorus, soloists
ウィーン祝祭合唱団 – Vienna Festival Chorus
ウィーン祝祭管弦楽団 – Vienna Festival Orchestra
セルジュ・チェリビダッケ – Sergiu Celibidache (指揮)
チェリ(省略する)のことを書いた本を見てもオペラを振ったという話は読んだこともなく、ご当人もオペラに関心がなさそうな感じではあるが、この盤(実際はNAXOSだから盤ではなくサブスクというのが正しい…) でもチェリらしい音楽になっている。
テンポは遅め(いつものこと)。とはいうものの極端に遅い(モーツァルトのレクイエムのような)ということもない。
その少し遅めということもあり、装飾が多いアガーテ、エンヒェンはその装飾的なフレーズがやや重く聴こえてくる。
そのあたりを気にしなければ、これはこれでなかなか聴かせるものといえるだろう。
この作品で一番有名な「狩人の合唱」では楽譜にとても忠実にffとpの落差をはっきりと歌い分けている。
第2幕の狼谷のシーン(track 9.)はとてもスペクタクル。この歌劇を観た9歳のヴァーグナー少年に大きな印象の残すだけでなく、その書法は後の楽劇のそこかしこに感じられるのだが、まさにチェリらしい盛り上げかただ。
- Overture
- Act I: Waltz – Aria: Durch die Walder, durch die Auen (Max, Caspar)
- Act II: Arietta: Kommt ein schlanker Bursh gegangen (Aennchen, Agathe)
- Act III: Romance – Aria: Einst Traumte meiner sel’gen Base (Aennchen)
- Act III: Folksong: Wir winden dir den Jungfernkranz (First Bride’s Maid, All, Second Bride’s Maid, Aennchen, Agathe)
- Act II: Aria: Wie nahte mir der Schlummer (Agathe)
- Act II: Trio: Wie Was Entsetzen! (Agathe, Aennchen, Max)
- Act II: Finale: The Wolf’s Glen (Chorus of Invisible Spirits, Caspar, Samiel, Max, Echo)
- Act III: Was gleicht wohl auf Erden (Chorus of Huntsmen, Ottokar, Caspar, Max, Agathe)
10.Act III: Cavatina: Und ob die Wolke sie verhulle (Agathe, Aennchen)
という順番に並んでいるのだが、ストーリー(曲の順番)では次のように並び替えるのが正解
- 2.> 3.> 6.> 7.> 8.> 10.> 4.> 5.> 9. ソリストは不明。合唱団メンバーが受け持ったなら立派な歌唱(少し堅苦しいしいが)。
ただしtrack 10. のCavatinaは、クーベリック盤のヒルデガルト・ベーレンスにはかなわない。
とここまで書いてきたが、この録音は本当にチェリのものなのだろうか?
「らしさ」は十分感じるのだが。
アルバムアートではチェリのスペルが違うし…
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