音楽への"homage"を主題として、思いつくまま気侭に書き連ねています。ブログ名はアルノルト・シェーンベルクの歌曲から
ジョアン・カルロス・マルティンスのブランデンブルク協奏曲

ジョアン・カルロス・マルティンスのブランデンブルク協奏曲

このくらいだな、という(僕なりの)「標準となるテンポ」の幅を超える演奏。

時に速く、時に遅く。しかし、どのような時においても音にエネルギーが感じられる。

ブランデンブルク協奏曲において、カール・リヒターをはじめとしてピリオド系ならレオンハルト/クイケン/ブリュッヘンという豪華メンバーの盤、「伝統的な」アプローチなら古くはコルトー、フルトヴェングラー、カラヤン、ミュンシュ、あるいはカザルス、ブリテン、(少し異なるが)アバド盤など多くの録音がある。これらが「標準となるテンポ」として(もちろんそのなかでも幅はあるが)のこと。

ジョアン盤は全6 曲で構成されるこの作品を、明瞭な輪郭をもった、弛緩することのない、ヴィヴィッドな、時としてスリリングともいえるバッハにしている。そして、なによりも音に暖かさがある、と言いたい。

乙にすますでもなく、奇を衒うこともない。ジョアンが思うバッハをイギリス室内管弦楽団と一緒に作り上げた。チェンバロ協奏曲ともいえる5番。往々にして派手さがばかりが強調されがちなのだが、ジョアン盤ではその華やかさ、煌びやかさは薄れることなく、しかし少しも浮ついたところが感じられない。

これまでこの曲の一番のお気に入りはゲルハルト・ボッセ盤(旧盤)だったが、それと同じ位置を占めることになった。

アマゾン河(の支流)で水浴をするインディオ女性(だと思うのだけれども)を動きの一瞬を捉えた写真をあしらったアルバムアートに惹かれて買ったCD。中には解説のライナーノートすらない….というシンプルさ。

ブランデンブルク協奏曲

30代 ― いわば壮年期のバッハは、主に器楽用作品を多く書いていた。ヴァイマル、ミュールハウゼン、再びヴァイマルと活動の場を移してきたバッハが、音楽愛好家でもあるアンハルト=ケーテン侯レオポルトに仕えることになる。バッハ65年の生涯において、ケーテン時代ともいえる約6年間に、インヴェンションとシンフォニア、イギリス、フランスの両組曲、平均律第1集、無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ、無伴奏チェロ組曲、そして宮廷が抱える優れた楽団のために管弦楽組曲、ブランデンブルク協奏曲を書き上げている。器楽向け作曲家としてのバッハの代表作が揃うことになる。ちなみにケーテンの次にライプツィヒに移り、聖トーマス教会のカントル「トーマスカントル」としてマタイ、ヨハネの受難曲、ロ短調ミサ曲、日々の活動としてカンタータといった宗教的な作品を作ることになる。

ブランデンブルク=シュヴェート辺境伯クリスティアン・ルートヴィヒに献呈され、のちに曲名ともなったブランデンブルク協奏曲は6つの作品で構成される。それぞれは編成が異なり、その変化に富んだ曲調は聴き手に様々な愉しみを与えてくれる。

ジョアン・カルロス・マルティンス João Carlos Martins

ブラジルのピアニスト。若くしてその才能を認められ広く活躍する。
しかし、なのだ。

Wikipedia英語サイトのGoogle翻訳は以下:


マーティンズは、彼の慈悲深いキャリアを通して怪我や挫折に悩まされ、驚くべき忍耐力と決意を示してきました。1995年にブルガリアを訪問している間、マーティンズは2人の凶悪犯に襲われ、頭蓋骨と脳に怪我を負い、右腕の使用を失いました。右腕のバイオフィードバック療法の新バージョンを含む数々の治療を受けた後、1996年にカーネギーホールで勝利のカムバックコンサートを行い、アメリカ交響楽団のソリストとして出演し、ラヴェルとヒナステラを演奏しました。

2000年の初めに、彼は右手で失敗した手術を受け、それは彼の手を本質的に役に立たなくしました。マーティンズはピアノから完全に引退する代わりに、左手と右手の1本の指を使って演奏を続けました。

ピアニストとしてのキャリアが後に左手で発生した問題のために終わった後、彼は非常に限られた手の動きにもかかわらず、指揮に転向しました。それ以来、彼はカーネギーホールでの絶賛されたコンサートを含む世界中の何百ものパフォーマンスをリードしてきました。

2020年に、彼はバイオニックグローブの助けを借りて両手で遊ぶことに戻りました。それらは、ブラジルの工業デザイナー、ウビラタン・ビザロ・コスタによって彼のために特別に開発されました。

ピューリッツァー賞を受賞したニューヨークタイムズの音楽評論家、ハロルドC.シェーンバーグは、「彼のテクニックはあらゆる方向に花火を送ります…彼はすべてを並外れたエランで行います」と述べています。ボストングローブは彼を「グレン・グールド以来出現した現代ピアノのバッハの最もエキサイティングなプレーヤー」と特徴づけ、ナショナル・パブリック・ラジオはマーティンズのバッハを「たとえばフルトヴェングラーのベートーベンやバーンスタインのブラームスと同じ伝統で」と表現しました。ピアニスト素材に鮮やかなスタンプを押したので、もはや作曲家だけではありません…文字通り息をのむようなものです。」


このような悲しい話が独り立ちしてしまうことで、その人の作る音楽から遠ざかってしまうということがよくある(例えば数年前の贋作騒ぎとか…)が、そういったことから完全に切り離してその人の音楽を考えるというはまた別の難しさもあるというのも事実ではある。

マルティンスがバイオニック・グローブのサポートを得てピアノを弾いている動画が彼のInstagram に公開されている。

弾いているのはバッハのチェンバロ協奏曲 ― イタリアの作曲家マルチェロのオーボエ協奏曲をバッハが編曲したもの。架空庭園の書 第1巻にエントリーがある。

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